プロジェクトレポート

PROJECT REPORT

足羽川ダム本体建設(第二期)工事
(福井県今立郡池田町)

足羽川ダムは、水害被害を防ぐ治水を目的とし、上流で洪水を調節するダムで日本最大規模の流水型ダムだ。
ダム本体は段階整備に適さない構造物であることなどから、4河川(水海川、足羽川、割谷川、赤谷川)からの導水を見越した規模で建設されている。
丸磯建設は、主にダム本体と原石山の掘削・骨材採取・運搬を担当している。

プロジェクトレポート

PROJECT REPORT

足羽川ダム本体建設(第二期)工事
(福井県今立郡池田町)

足羽川ダムは、上流で洪水を調節するダムで日本最大規模の流水型ダムです。
ダム本体は段階整備に適さない構造物であることなどから、4河川(水海川、足羽川、割谷川、赤谷川)からの導水を見越した規模で建設されています。
丸磯建設は、主にダム本体と原石山の掘削・骨材採取・運搬を担当しています。

人の暮らしも自然環境も守る。
40tのアーティキュレートダンプを駆使する、日本最大規模の流水型ダム建設工事

2004年7月18日未明から昼前にかけて、福井県嶺北地方に発生した集中豪雨により、福井市内を流れる足羽川の左岸堤防が決壊し、甚大な被害をもたらした福井豪雨。市街地が水に浸かり、美山町(当時)では足羽川に架かるJRの鉄橋が流されるなどの被害が発生しました。福井県全体では、死者・行方不明者5名、床上・床下浸水は計約1万4千世帯などの大きな被害です。
このような水害を繰り返さないために、上流で洪水を調節する足羽川ダムが建設されています。
治水を目的としたダム工事というスケールの大きな現場について、足羽川ダム作業所の原田耕一郎所長、および村上正典副所長にお話を伺いました。

  • 丸磯建設株式会社 関西支店 土木部 所長 原田耕一郎

  • 丸磯建設株式会社 関西支店 土木部 副所長 村上正典

  • 丸磯建設株式会社 関西支店 土木部 大濱航平

骨材となる採取岩を掘削する原石山、何台もの大型重機が大活躍

事業主体:国土交通省近畿地方整備局、施工:清水・大林特定建設工事共同企業体として始まった足羽川ダム建設工事。
この工事で丸磯建設は主に掘削・採取・運搬を担当しており、第一期工事分の転流仮締切、ダム本体掘削、原石山掘削(一部)、骨材製造設備ヤード造成が終了し、2024年4月から第二期工事がスタートしています。第二期では、原石山掘削工事、廃棄岩・採取岩運搬工事、そして金見谷での建設発生土処理工事に携わっています。
大きな重機が動いている原石山の現場は、まさに壮観といった光景が広がっています。
現場では採掘した岩を骨材となる採取岩とそれ以外の廃棄岩に分けた後、一度に40tもの採石を運搬できる8台のアーティキュレートダンプによって、骨材製造設備と金見谷へそれぞれ何度も往復して運びます。一般土木で使用するような重機とは規模が違う大型重機での作業。一部の隙もないプロの仕事が展開されています。

-「原石山の採掘面からは湧水が多数見られるため、水処理作業が伴います。調査横坑から溜まっていた雨水が流れてくるため、高低差のある掘削をする際は予め最下流に沈砂池を設けます。現場を常に乾いた状態にしておくことが必要なため、排水路より切羽が低くなると強制排水が必要となります。この現場に関しては、岩盤が不連続であり、節理や亀裂・断層が存在するため、掘削時に地質調査を並行して行うほか、最終形状を考慮して排水設備の選定・設置場所・メンテナンス方法などを他工種業者と計画する必要があります」(原田所長/村上副所長)。

原石山全景動画

ダム工事という大規模現場では、使用される重機もかなり大型のものを使用します。
大型重機であるため、故障した際に簡単に入れ替え・交換とはなりません。そのため、日々のメンテナンスが非常に重要になってきます。

-「社員はある程度重機に関する知識と経験が求められます。 また大型重機を使用するにあたっては、大型クレーン車や高所作業車などを使用して、重機の組立てや解体作業が発生します。エリアの確保、クレーンの手配・配置、組立部品の配置、組立・解体手順、運搬車両の進入順序など細かい計画が必要となります。
その分、無事に稼働している大型重機を見るとホッとします」(村上副所長)。

  • 原石(骨材)の採掘を行っている現場

  • 原石山での小割作業

  • 廃棄岩をアーティキュレートダンプで運搬

  • 原石山を発破掘削し、骨材を採取

  • 原石山現場に集合する丸磯重機

採取石を破砕・洗浄して骨材を作る骨材製造設備

原石山から骨材として運ばれた採取岩は一次破砕設備で200mmほどに砕かれます。砕かれた石はベルトコンベアに乗せられ、1次サージで保管されます。 その後洗浄やふるい分けなどがされ、コンクリートの材料となる3種類の大きさの砂利(粗骨材)・砂(細骨材)に分けられます。
骨材製造設備で作られたそれらの骨材はベルトコンベアで運ばれ、骨材調整ビンで骨材の大きさごとに貯めておきます。最後に、バッチャープラントにて材料を練り混ぜコンクリートにします。

骨材製造設備全景動画

  • 骨材製造設備

  • 一次破砕設備 ここで粒径200mm以下の大きさに砕きます。

  • 破砕設備 ふるい分けした原石を破砕していきます。

  • 骨材貯蔵設備 4種類の骨材を一時的に貯蔵

堤高約96m、堤頂長約351m、堤体積約70万㎥、流水型ダムでは日本最大規模

足羽川ダムは、九頭竜水系の福井県今立郡池田町に堤高約96m、堤頂長約351m、堤頂積は約70万㎥の洪水調整専用の重力式コンクリートダムで、完成すれば総貯水容量が2870万㎥という日本最大規模(ダム高、堤体積、洪水調節容量)の流水型ダムです。
流水型ダムとは、平常時は川の水を堰き止めることなくそのまま流していますが、洪水時にはダムのゲートを閉めることにより、上流側に水をため、下流が安全となってから貯めた水を下流に放流するというタイプのダム。環境への負荷がゼロになる訳ではありませんが、生態系への影響や土砂の移動、水質の悪化などに対し、貯留型ダムに比べると環境に優しいダムであると言えます。

-「足羽川は鮎釣りで有名であるため、河川への濁水や土砂の流出に対して非常に神経を使う現場です」(原田所長)。

丸磯建設は主に掘削・採取・運搬を担当しており、第一期工事分の転流仮締切、ダム本体掘削、原石山掘削(一部)、骨材製造設備ヤード造成が終了し、2024年4月から第二期工事がスタートしています。第二期では、原石山掘削工事、廃棄岩・採取岩運搬工事、そして金見谷での建設発生土処理工事に携わっており、当社請負工事については2026年8月に工事完了予定です。

足羽川ダム全景動画

24時間体制で進められている堤体工事、ケーブルクレーンで重機も運搬

足羽川ダムは、ダム自身の重さで貯水池からの水圧を支える重力式コンクリートダムを巡航RCD工法で建設しています。ダム本体の掘削は第一期で終了しており、現在は堤体部分の建設工事になります。コンクリートを下から何層にも重ねて堤体を作るため、建設に必要なコンクリートを現場近くで作ります。原石山より採掘した岩石を選別し、骨材に適したものだけ骨材製造設備まで運搬。その骨材を使用してコンクリートを製造し、ケーブルクレーンを使って打設現場まで降ろしていきます。 堤体の上をケーブルが走る、左岸から右岸に取り付けられたケーブルクレーン2基は、18tもの荷物を吊り下げて運ぶことができます。コンクリートの他、現場で使う重機などもこちらで現場に運ばれます。

-「堤体内においては重機に車両搭載型AI監視カメラシステムを搭載しています。重機キャビン内のモニターにて車両や人を識別し、警告音とライト点灯でオペレーターに知らせてくれます。こちらの現場は現在24時間交代制で稼働しています」(原田所長)。

約6日間で1リフト(高さ1m)仕上げ、取材をした2025年10月時点では、海抜240mの高さまでできていました。

-「24時間体制での作業となると、単純に1日で通常の3倍のスピードで工事が進んでいきます。ただ福井県内において当現場は豪雪地帯(平均積雪1.0m以上)であるため、12月21日から3月31日までは冬季閉鎖されます。そのため工期短縮が大きな課題です」(原田所長)。

  • 足羽川ダム 右岸より

  • 足羽川ダム 左岸より

  • 足羽川ダム 夜間作業の様子

  • 生コンクリートは大型バケットに投入され、ケーブルクレーンで打設場所まで運搬

  • 堤高約96m、堤頂長約350m、洪水調整専用(流水型ダム)の重力式コンクリートダム

ダム工事は他工種との協同作業、スケール感と大規模構造物の建設が醍醐味

最後にこの大規模プロジェクトについて特に気をつけていること、そしてダム工事の魅力をお二人に伺いました。

-「ダム工事はさまざまな工種があり作業間の調整が必要になります。円滑に作業ができるよう日々打ち合わせを欠かさず、コミュニケーションを取ることが大切です。また山奥の工事のため、生活の不便さはありますが、他では味わえないスケールの大きな現場でもあります。日々の積み重ねの結果、巨大な構造物が出来上がっている。その達成感は比べようもありません。またトンネル、橋梁、コンクリートプラントなど、土木工事のさまざまな工種に触れる機会が得られます。そして、普段街中ではあまり目にすることのないサイズの重機に触れることも、魅力の一つと言えるでしょう」(原田所長)。

-「原石山・金見谷においては、重機と人との分離、重ダンプと他車両との走路区分を確実に行い、接触事故の防止に努めています。重機作業エリアへの立ち入りは原則禁止とし、全ての重機に無線を搭載させ、合図を行なってからのエリアへの立ち入りを徹底しています。切羽内を走行する工事車両のルーフにはチェッカーフラッグを取り付けたりするなど、ルールを徹底しています。この現場ではスケール感もあり、視野をより一層広げられたと感じます。現場作業を進めるにおいて、目の前のものを集中して見る『虫の目』、現場全体を俯瞰して見る『鳥の目』、そして流れを読んで未来を見通す『魚の目』が必要とされます。この経験を次に活かしていきたいと思います」(村上副所長)。

  • 「コミュニケーションを取ることが大切」と語る原田所長

  • 「虫の目」「鳥の目」「魚の目」が必要と語る村上副所長

足羽川ダムで働く丸磯社員

工事概要

工事名 足羽川ダム本体建設(第二期)工事
工事場所 福井県今立郡池田町
工期 JV工期 2020年8月〜2024年9月(第一期)
2024年4月〜2028年3月(第二期)
実施工期 2020年11月〜2026年3月(工期延伸予定、今後協議予定)
注文者 清水建設(株)・(株)大林組JV
発注者 近畿地方整備局
主要工事 堤体掘削 土石掘削 560,000m3
岩石掘削 80,000m3
小畑A 盛土 760,000m3
上流仮締切工 1式
骨材製造設備ヤード造成 土石掘削 70,000m3
上流進入路造成 土石掘削 56,000m3
原石山掘削 原石採取 650,000m3
表土・魔棄岩掘削 1,240,000m3
金見谷建設発生土処理場 土砂受入 1,400,000m3
堤体コンクリート打設 巡航RCD工法 220,000m3
使用重機 バックホー ZX890(3.5m3)(日立建機)
ZX690(3.0m3)(日立建機)
ZX350(1.4m3)(日立建機)/ブレーカー
336(1.4m3)(CAT)
ZX200(0.8m3)(日立建機)/3DMG
ブルドーザー D8(38t級)(CAT)
D6N(16t級)(CAT)
ダンプトラック A40G(40tアーティキュレートダンプ)(VOLVO)