北海道横断自動車道路 黒松内釧路線 北海道横断自動車道路 黒松内釧路線
プロジェクトレポート

PROJECT REPORT

北海道横断自動車道
忍路工事/船取山工事(北海道小樽市)

北海道横断自動車道は、北海道を東西に貫き、後志(しりべし)・道央・道東地域の連絡強化を図り、沿岸地域の産業・経済の発展に資する路線。そのうちの黒松内根室線は、札幌オリンピック時に造られた札樽自動車道の途中で現在ハーフジャンクションとなっている小樽JCTから、余市ICまでの約23.4kmの工事をさす。その中の忍路工事と船取山工事、距離として約5kmを五洋建設と丸磯建設が担当している。

北海道横断自動車道は、北海道を東西に貫き、後志(しりべし)・道央・道東地域の連絡強化を図り、沿岸地域の産業・経済の発展に資する路線。そのうちの黒松内根室線は、札幌オリンピック時に造られた札樽自動車道の途中で現在ハーフジャンクションとなっている小樽JCTから、余市ICまでの約23.4kmの工事をさす。その中の忍路工事と船取山工事、距離として約5kmを五洋建設と丸磯建設が担当している。

町の発展に寄与する高速道路建設。北海道ならではの厳しい工程や、土質を改良しながら進めていく造成工事

美しい海岸線と山々、北海道の美味しい食材は、季節を問わず多くの観光客を魅了させます。近年では新千歳空港へ直接国際線が乗り入れ、日本各地からだけでなく、アジアを中心に外国人旅行客も多く訪れています。小樽や余市周辺も果樹園や海沿いの景勝地などへの日帰り観光、そしてニセコのスキー場など観光スポットが集まるエリア。現在、主なアクセスとしては小樽ICを降りた後、並行する国道5号線を利用するしか術はありません。また多くの農作物、水産資源、そして救急搬送なども同じ道を利用するため、渋滞緩和を望む声が地元を中心に多くあったため、NEXCO東日本が黒松内釧路線として、2018年度(平成30年)度の開通を目指し工事を進めています。忍路工事と船取山工事を担当する、関東支店土木部の二川工事課長と高津工事主任にお話を伺いました。

  • 五洋建設株式会社 札幌支店 統括所長 益子篤史氏

  • 関東支店 土木部 工事課長 二川 誠

  • 関東支店 土木部 工事主任 高津 瑛嗣

作業途中の思わぬアクシデント。工事内容の大きな見直しにも臨機応変に対応

「船取山工事もあと3割くらいを残すだけとなりました(2018年6月現在)。」 数多くの重機が行き交う船取山工事現場を、高津さんに案内してもらいました。自然を相手に行っている土工事は、天候などによって工事期間や作業内容が変わることが多々ありますが、今回の忍路工事も、北海道ではあまりない台風被害により、作業内容が変ってしまいました。
「もともと丸磯建設の土工事担当区間は忍路工事区間の約4.5kmでした。3年の工事期間中、冬期作業休止期間を除いた7ヶ月が実質の作業期間です。2018年8月に4つの大きな台風が北海道を襲い、その影響で工事区間に地滑りが発生してしまいました。当初は山を切り崩し、その土を谷部分へ盛ることで高速道路の高さを合わせて道路を整備する予定でしたが、そのままだと崩れる心配があるため、下にカウンターウエイトで土を盛って滑りを抑える工事を先に行いました。その後に改めて地滑りのボーリング調査をしたところ、滑り面がずっと上の方まで続いていた事が判明しました。今回の地滑りはその中の一部が滑っただけだったのです。そのため、本来なら滑った土を撤去して良質土を置き換えて盛るという方法をとりますが、滑り面がその上まで続いているため、土の撤去作業中にまた新たな土が滑ってくることが考えられます。結局工事方法を変更し、いったん盛り土をしてトンネルを掘る方法へとなりました。その部分も含めて船取山工事へと変更となります。」 取材当時は新たに計画された船取山トンネルも完成し、周辺整備の工事が盛んに行われていました。

  • 余市ICまでの約23.4kmの工事

  • 盛り土をして工事を進める船取山トンネル

北海道という土地ならではの工程。土質を見極めて、適切な処理を施しながら進める工事

工事が長期にわたる原因として、北海道ならではという事情もあります。冬期は土が凍結し、作業ができなくなってしまうからです。
「北海道では、冬の間は土を動かせないため、コンクリート打ちやトンネル掘削工事以外は、春〜秋までの作業期間となります。冬に工事がストップするのは、土が凍ってしまうからです。仮に冬に土工事をしても、夏に土中の氷が溶け、水分が抜けて空洞ができて圧密沈下してしまいます。これは北海道特有の事情ですね。工事期間4年のうち実働26ヶ月の工事期間となりますが、仮に同じ工事を本州でしたなら3年でできるでしょう。また毎年、重機や看板、安全設備などの取り付けと取り外しで約1ヶ月くらいかかるので、同じ現場なのに4回、段取りと終わり仕舞いをしなくてはならない。まるで4ヶ所の現場をやっているようですね。」

また、土質も工事を困難にさせている理由のひとつです。
「今回の工事現場の土は水分が多いんです。関東ローム層や鹿児島のシラス台地などと同じ、火山灰が積もった土。柔らか過ぎてローラーを使って固めるということができない。ブルドーザーで押してギリギリです。まずは土から水分を除いて、良い土に変えることから始めなくてはなりません。そのため石灰を混ぜて水分を飛ばすという作業が入ります。結果20万㎥近くの土を改良しました。また改良土を盛った後でも水分は当然出てきますから、排水のためのU字配管などの構造物の取り付けも作業に入ってきます。」

  • 土の水分を除いて、良い土へ改良する

  • ローラーを使って固める作業

工事を円滑に進めるために、技術提案を含めた丸磯建設としての作業工程を作成

1本の高速道路を数社で区切って担当するため、工期と仕上がりを調整しながら進めていくことが大切になります。
「当然、いつまでに完成させるという期日はあり、しなくてはならない作業行程があります。工事に入る前に全期間分の工程表を作り、それを年ごと、月ごと、週ごとのも作ります。問題が発生した場合には、その都度見直しをかけ、軌道修正しながら進めていく。本来なら元請けが作った工程表に従っているだけで良いのでしょうが、我が社の責任者は皆、自分たちも工程表を作成し、工事が安全且つスムーズに行われるように両社の工程表の良いところを取り込んでいきます。こういった積極的に関わっていくという行為が元請けの信頼を得られる。我が社の強みだと思います。また、今回は熟練のオペレーターが多かったので、ICT搭載の重機はローラーのみでしたが、これからの時代はまだ日の浅いオペレーターも作業がしやすいよう、どんどん取り入れていくと思います。丸磯建設でも各現場に技術提案をしています。」

小樽から余市まで北海道横断自動車道が繋がると、あらゆる面で市民生活の向上が見られることでしょう。今回の工事は各区間、完了したごとに引渡しをするため、工事途中でも成果が分かります。将来、たくさんの人がこの道路を使って、街が発展していく姿も容易に想像ができます。
人々の笑顔のために、誇りと自信を持って、次の現場へと向かっていきます。

  • SH200(0.7m3BH)、SH75(0.3m3BH)、D3Kブル(6t級)、SV512Dローラー(10t級)

  • SH2000.73BH

工事概要

  • 工事名:北海道横断自動車道 忍路工事
  • 工 期:平成26年1月21日〜平成30年2月28日
  • 工事名:北海道横断自動車道 船取山工事
  • 工 期:平成29年7月14日〜平成31年1月4日
  • 発注者:東日本高速道路株式会社 北海道支社
  • 元請会社:五洋建設株式会社 札幌支店
  • 使用重機:

    バックホウ
    SH200(住友)0.8m3、PC350(コマツ)1.4m3、ZX470(日立)2.0m3、ZX670(日立)3.0m3

    ブルドーザー
    D3K(CAT)、6t級、D65PX(コマツ)、21t級、D8T(CAT)、39t級、D155AX(コマツ)、40t級

    振動ローラー
    SV900DV(酒井)20t級、SV512D(酒井)10t級

    重ダンプ
    A40F(ボルボ)40t級、A25F(ボルボ)25t級