国道283号 釜石西地区道路改良工 国道283号 釜石西地区道路改良工
プロジェクトレポート

PROJECT REPORT

国道283号 釜石西地区道路改良工事(岩手県釜石市)

地域の産業活動の活性化や災害時の救助・救援、そして救急医療時間の短縮などを期待して整備が行われてきた花巻釜石道路。完成時には秋田東北自動車道花巻JCTから釜石花巻道路を通り三陸自動車道へとつながり、交通の便が決して良くなかった内陸と沿岸を結ぶ高速道路となる。

地域の産業活動の活性化や災害時の救助・救援、そして救急医療時間の短縮などを期待して整備が行われてきた花巻釜石道路。完成時には秋田東北自動車道花巻JCTから釜石花巻道路を通り三陸自動車道へとつながり、交通の便が決して良くなかった内陸と沿岸を結ぶ高速道路となる。

“山で隔たれた内陸と沿岸を結び、街の活性化につなげる。地域住民の暮らしに密着した道路を、ICTの活用によって造成

2011年の東日本大震災のあと、多くのボランティアが岩手県遠野市を拠点に、釜石市など沿岸地域の復旧に携わりました。花巻JCT〜東和ICまで開通して以来、長い間全通されなかった釜石花巻道路は、震災後にその必要性がクローズアップされ、「復興支援道路」のひとつとして2018年度の全通開業を目指して工事が進んでいます。東日本支社土木部釜石西作業所の、関所長および伏見さんに話しを伺いました。

  • 土木部 所長 関 邦洋

    東北支店 土木部 関 邦洋

  • 土木部 伏見 真

    東北支店 土木部 伏見 真

人々の暮らしを間近にした作業。より安全に、正確に

「東北横断自動車道釜石秋田線は、起点の岩手県釜石市から秋田市に至る総延長212kmという計画ですが、現在一部未開通の区間があり、そのひとつが釜石道路です。これは釜石JCT(仮)と釜石西IC(仮)を結ぶ延長6kmの自動車専用道路で、丸磯建設が担当するのはそのうちの約700m区間となります。道路整備をすることでの効果としては、災害時に救助・救援活動をスムーズに行える支援道路となること、産業活動の活性化への期待、そして救急医療施設への搬送時間の短縮が挙げられます。担当工事区間の近くに県立釜石病院がありますが、そこへの救急車退出路の整備工事も含まれています。」

  • 内陸から沿岸へ向かう山間を切り開く工事現場。

  • 丸磯建設が担当する約700m区間。

2019年のラグビーワールドカップへ向けて、着々と進む工事

「東北横断自動車道釜石秋田線は、約4.5kmの新仙人トンネル(滝観洞IC—釜石西IC)など、トンネルが多い北上山地を貫く道路。途中の景色は緑深い山々ですが、釜石市に入ってからは甲子川沿いに進んでいきます。釜石市は、道路整備計画も一因となり、ラグビーワールドカップ2019の試合会場に選定されました。世界中から多くの選手や観客が釜石を目指してやってきます。道路の完成により、選手や観客が安定して移動できることを期待されています。」

  • 空撮写真

    清流・甲子川の先に、釜石鵜住居復興スタジアム(仮称)が予定されている。

  • 釜石鵜住居復興スタジアム(仮称)へのアクセス

作業工程の見直しは経験を活かして。近隣への配慮も重要ポイント

事務所で工事の概要の説明を聞いた後、関所長と現場へ移動。そこは、鮎釣りを楽しむ人が見受けられる清流・甲子川沿いの斜面にありました。 山肌を大きく削る油圧ショベルが、斜面にへばりつくように配された現場で、足元には住宅街が広がります。取材時点では、山の斜面に約7m毎に造られた段差の法面整形の作業が進行中。ここで掘り出された土は、そのまま橋脚の土台となるため、油圧ショベルが削り取った土を下段で待つ油圧ショベルが運び、またその下段へ下ろすという連携作業が行われていました。

「工事の作業計画というのはもちろん最初からありますが、実際現場に来てからオペレーターと細かい部分を相談します。今回はより安全でスムーズに作業が行われるよう、上から土を落とす場所を1ヶ所に決めて、シューターを掘りました。落ちてくる場所に油圧ショベルが待機し、土をまとめて下へ下ろす。シューターは掘削作業が行われている場所が移動するたび、新たに作り直します。重機の移動を少なくすることで、効率的かつ安全に進められるようになります。」今までの工事経験が、ここでも活かされています。

「この現場は道路を挟んですぐに民家があります。また甲子川沿いを散歩する人も多くいる。土木の工事現場としては珍しいと思います。そのため、整理整頓はもちろん、騒音や泥でご迷惑がかからないようにするなど、普段よりも気を配ることが多い現場です。」

甲子川に架かる橋は、作業現場が一望できる場所。人々の暮らしを快適にする高速道路が完成した暁には、ここからどんな景色が見えるのでしょうか。三陸の海から川面を登ってくる、心地よい風とのんびり飛んでいるカモメが、まるで作業の様子を見守っているかのようでした。

  • 山肌を大きく削る油圧ショベル

  • スムーズに作業が行えるよう上から土を落とすシューターを掘る

経験にプラスα。ICTの活用で作業効率をアップ

今回の道路改良工事は、ICT重機を使った国土交通省指定型のICT活用工事でもあります。ここでは、衛星を使ったレーザースキャナで計測し、現況地形を3次元にする「3次元起工測量」、2次元の図面から専用のソフトで3次元にモデル化する「3次元設計データ作成」、マシンコントロールとマシンガイダンス重機で施工する「ICT建設機械による施工」、無人航空機による写真測量から3次元モデルを作成し、出来形判定用のヒートマップを作成する「3次元出来形管理等の施工管理」、そして3次元施工データを工事完成図書として納品する「3次元データの納品」の5つの項目を実施します。

衛星を使ったレーザースキャナで計測し、現況地形を3次元にする「3次元起工測量」

2次元の図面から専用のソフトで3次元にモデル化する「3次元設計データ作成」

早さ・正確さはもちろん、仕上がりの良さも納得のICT建機

丸磯建設は「ICT建設機械による施工」を担当。取材時点で使用されていたICT建機は油圧ショベルで、ベテランのオペレーターが操作をしていました。

「油圧ショベルのバケットの先、爪の部分にセンサーがあり、コンピューターで計算されたXYZの座標を衛星から受け取って作業をします。決められた深さ以上に機械が削ってしまわないよう、自動で掘削に制御がかかり、同時に警報音でも知らせてくれます。精度と操作性に優れ、仕上がりもきれいです。通常、同種の機械ですと、掘削後コックピットから降りて、ちゃんと掘れているか目視で確認しなくてはなりません。ちょっとでも法面がデコボコしていれば、また機械に乗って作業し、その後降りてまたチェック、という行程が繰り返されます。でもICT建機であれば、その動きはいりません。座標軸にくるいがなく、機械が誤作動しなければ、機械が勝手に法面整形してくれます。正確に作業を進めるために、毎朝、機械のコンディショニングと座標の確認は欠かせません。」

衛星による送受信のため、時間帯によってはデータが受け取りにくい時もありますが、それ以外は熟練オペレーターも納得の働きをしているとのこと。今後ますます主要重機となってくることでしょう。

  • バケットの先にセンサーがあり、コンピューターで計算された座標を衛星から受け取って作業を行う

  • ベテランのオペレーターが操作

工事概要

  • 工事名:国道283号 釜石西地区道路改良工事(岩手県釜石市)
  • 発注者:国土交通省 東北地方整備局
  • 元請会社:(株)安藤・間 東北支店
  • 工 期:2016年10月〜2018年7月(予定)
  • 使用重機:
    油圧ショベル
    0.8m3(ICT)×2台、0.8m3(ハイブリッド)ブレーカー×1台、0.8m3×5台、0.8m3ロング×1台、0.5m3×2台
    キャリアDT 10t×1台